幸せの市役所広場
- 千葉正樹

- 2 日前
- 読了時間: 3分

30年ほど前から広場と呼ばれる空間の研究を続けている。一年前には吉川弘文館から『江戸の広場と公共性』という本を出した。
世界中の広場を訪ねてきているけれど、2026年6月1日、オーストリアのグラーツGraz
で出会った市役所広場(ハウプト広場Hauptplatz)は素晴らしかった。ツァーだったので自由時間は20分、その間、文字通り駈け回って、写真に収めた。

市役所広場なのだから、主役は市役所だ。18世紀に建てられたという堂々としたたたずまいが印象的だ。日本では市役所というと「官の空間」=「お上の空間」であまり親しみは感じない。でも、オーストリアを初めとするヨーロッパ諸国では、市役所は市民のものであって、みんなから愛されている。グラーツはどうだったか確かめられなかったが、よく地下などがレストランになっていて、飲んべえが昼間から楽しんでいる。

ヨーロッパでは市役所結婚が盛んだ。日本でも登記に行くが、それがそのまま結婚式となって、市役所前にはお祝いする友人や家族たちがおしゃれして集まる。
グラーツでも偶然、市役所で結婚したばかりのお二人と出会った。市役所でサインして、真ん中の銅像で記念撮影、あとは広場の露店街で乾杯だ。

広場の一角にはメイポール(ドイツ語だとマイバウム)、五月の木が立てられていた。遅い春を喜び、夏至を祝う。冬のクリスマスツリーと対をなす、ゲルマン民族の伝統だ。ここ市役所広場は祝祭の空間でもある。


広場の半分は露店街になっている。全部ではないのは、その一方が市役所前だからだろう。愛する市役所を眺める、十分な「引き」が確保されている。

露店街の構成はさまざま、全部で十数店はあったろうか。
中にはスシバーもあった。スシボウルとは何か?ちらし寿司を思えばいいのかもしれないが、ビーフボウル、ポークボウルがそのカテゴリーに入っているぞ。
午前中だったせいか人出はまばら(一角のワインバーだけが結婚式のメンバーで賑わっていた)だったけれど、夕方になると一変するのだろう。




ヨーロッパの都市にトラム(路面電車)は欠かせない。自家用車の中心部への乗り入れを寄生しているところも多い。ここグラーツでは市役所広場に八方を結ぶトラムが引き込まれている。仙台の失われた市電を思い出す。市電の線路が及ぶ範囲が、仙台の街で、子供の時、線路の及ぶ範囲へは一人で出かけることが許されていた。線路は街を可視化してくれる。

グラーツの市役所広場を取り巻くのは、市役所と同じころたてられた、豪奢なバロック様式の建物だ。大事に修復して、使い続けているのだろう。花なども飾られて、広場に住む人びとの誇りを感じた。



何もかも西洋から輸入した明治時代、なぜか広場らしい広場は日本に成立しなかった。一方では江戸の広場は否定されて、姿を消している。
市役所広場には成熟した市民の支える、パブリックな空間の強さがあった。



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